2026.05.27

マンション大規模修繕の費用相場|戸数別・周期別の実額シミュレーション【名古屋・2026年版】

「初めて理事になって、来年度に大規模修繕が控えている。でも、いくらかかるのかが全く分からない…」

このようなお悩みを抱える管理組合の理事の方は少なくありません。マンションの大規模修繕は、戸数や規模によって数千万円から数億円の工事になります。理事会・修繕委員会で適切な意思決定をするには、まず費用相場を体系的に理解する必要があります。

本記事では、国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」を中心に、最新の市場データをもとに、戸数別・修繕回数別の費用相場 を実額シミュレーションで解説します。さらに、工事項目の内訳、費用が高騰する5つの要因、適正価格の見極め方まで、管理組合の理事会で実際に判断材料として使える情報を体系的にまとめました。

本記事で得られる情報:

  • マンション大規模修繕の費用相場(国交省最新データ準拠)
  • 戸数別(30戸/50戸/100戸/150戸/200戸)の実額シミュレーション
  • 修繕回数別(1回目/2回目/3回目)の費用推移
  • 工事項目の内訳と各項目の費用目安
  • 費用が変動する5つの要因
  • 適正価格を見極める3つのポイント

目次

結論|1戸あたり100〜130万円、100戸規模で1億円前後が目安

最初に結論からお伝えします。

国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(以下、国交省調査)によると、マンション大規模修繕の費用相場は 1戸あたり100〜130万円 が一般的です。これに戸数を掛けると、

戸数 総額の目安(1戸125万円換算)
30戸 約3,750万円
50戸 約6,250万円
100戸 約1億2,500万円
150戸 約1億8,750万円
200戸 約2億5,000万円

…と、規模感が見えてきます。ただし「1戸あたり◯◯万円」は乱暴な指標で、実際には戸数・修繕回数・建物の状態によって大きく変動します。詳細なシミュレーションを次章以降で見ていきましょう。

用語の確認

本記事では以下の用語を統一して使用します。

  • 大規模修繕: マンションの外壁・屋上防水・共用部などを総合的に補修する大型工事のこと
  • 修繕周期: 大規模修繕を行う間隔(従来12年が主流、近年は12〜18年に幅が広がる)
  • 修繕積立金: 区分所有者が毎月積み立てて、大規模修繕の費用に充てる資金
  • 長期修繕計画: 25〜30年程度の長期スパンで修繕の予定と費用を計画した書類

戸数別の費用シミュレーション

マンションの大規模修繕費用は、戸数(=建物規模)によって大きく変動します。国交省調査のデータをもとに、戸数別の費用感を整理します。

戸数別の費用相場(1回目の大規模修繕)

戸数 1戸あたり費用(中央値) 総額の目安
30戸以下 約140万円 約4,200万円
31〜50戸 約130万円 約6,500万円
51〜100戸 約120万円 約1億2,000万円
101〜150戸 約115万円 約1億7,250万円
151〜200戸 約110万円 約2億2,000万円
201戸以上 約105万円 約2億1,000万円超

(参照: 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」)

スケールメリットが効く

上表のとおり、戸数が増えるほど1戸あたりの単価は下がる傾向 にあります。これは、

  • 仮設工事費(足場・養生)が戸数で頭割りされる
  • 共用部の工事は戸数に比例しない部分が多い
  • 大規模なほど業者の競争原理が働きやすい

といった理由によります。30戸のマンションと200戸のマンションでは、1戸あたり30〜35万円程度の差が生まれます。

小規模マンション(30戸以下)の特殊性

逆に、30戸以下の小規模マンションは1戸あたり単価が高くなりがちです。これは、

  • 足場代などの固定費の頭割り効果が薄い
  • 業者の中には小規模物件を敬遠する所もあり、競争が起きにくい
  • 修繕積立金不足に陥りやすい

という事情があります。小規模マンションほど、適正価格の見極めと業者選びが重要になります。


修繕回数別の費用推移

大規模修繕は通常、12〜18年周期で行われます。築年数が経過するにつれて、修繕の規模・内容が変化し、費用も変動します。

国交省調査による回数別の費用相場(1戸あたり)

修繕回数 築年数の目安 1戸あたり費用(中央値) 総額目安(100戸の場合)
1回目 築12〜18年 約110万円 約1億1,000万円
2回目 築24〜36年 約110〜120万円 約1億1,000〜1億2,000万円
3回目 築36〜54年 約95〜100万円 約9,500〜1億円

一般的に「2回目が高くなる」と言われる理由

業界では「2回目以降の大規模修繕は1回目より高くなる」と言われる事が多いです。これは以下の理由によります。

1. 設備系工事の比重が大きくなる
– 給排水管・電気設備など、1回目では先送りされた設備の更新が必要
– 設備系は建築系より単価が高い

2. 防水層の更新範囲が広がる
– 屋上・バルコニー防水の劣化が進み、全面更新が必要に
– シーリング材も完全打ち替えが必須

3. 細部の補修箇所が増える
– タイル浮き、コンクリート爆裂などの本格補修が発生
– 鉄部のサビ進行、塗装の剥がれの範囲拡大

ただし、国交省調査では3回目はやや下がる傾向もあり、これは「3回目を実施する築古マンションは、建てた当時の住戸面積が小さい・外装が簡素」といった築年代要因があると分析されています。

物価高騰の影響(2024〜2026年)

近年、建設資材の価格高騰が続いており、大規模修繕費用にも影響しています。

  • 一般財団法人建設物価調査会「建設物価指数」(東京)は前年同月比+3〜4%で推移
  • 塗料・防水材・鋼材などの主要資材が値上がり傾向
  • 人件費(職人の労務単価)も上昇

5年前のデータをもとに長期修繕計画を立てていると、実際の見積もりが計画額を10〜20%上回るケースが頻発しています。最新の市場価格をもとに、長期修繕計画の見直しを定期的に行う事が重要です。


工事項目の内訳

大規模修繕の費用は、工事項目別に内訳が分かれます。一般的な100戸規模のマンション(1回目の大規模修繕)を例に、内訳を示します。

工事項目別の費用構成(100戸・総額1億2,000万円のケース)

工事項目 費用目安 割合
仮設工事(足場・養生・現場事務所等) 約1,800万円 15%
外壁工事(塗装・タイル補修・シーリング) 約4,800万円 40%
防水工事(屋上・バルコニー・廊下) 約2,400万円 20%
鉄部塗装(手摺り・鉄骨階段等) 約720万円 6%
共用部内装(廊下・階段・玄関ホール) 約960万円 8%
設備工事(給排水管・照明等) 約720万円 6%
諸経費・現場管理費 約600万円 5%
合計 約1億2,000万円 100%

(参照: 国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」をもとに編集部にて構成)

各工事項目の解説

仮設工事(全体の15%)
– 足場の設置・解体、メッシュシート、現場事務所、仮設トイレなど
– 工事規模・建物高さに比例して増減
– 削減困難な固定費

外壁工事(全体の40%・最大費目)
– 外壁の塗装、タイルの浮き・剥がれ補修、シーリング(目地)の打ち替え
– 1戸あたり40〜50万円が中央値
– 工法・塗料グレードで費用が大きく変動

防水工事(全体の20%)
– 屋上、バルコニー、共用廊下の防水層更新
– ウレタン防水、塩ビシート防水、アスファルト防水などの工法選択
– 2回目以降は完全更新が必要になり費用増

鉄部塗装(全体の6%)
– 手摺り、鉄骨階段、扉枠などの塗装・サビ止め
– ケレン(サビ落とし)作業の手間が大きい

共用部内装(全体の8%)
– 共用廊下、階段、エントランスの内装更新
– 居住者の満足度に直結する項目

設備工事(全体の6%)
– 給排水管、照明、インターホン等の更新
– 1回目では一部更新、2回目以降で本格更新


費用が変動する5つの要因

「うちのマンションは150戸だから、約1億7,000万円?」と単純計算したくなりますが、実際の費用は様々な要因で変動します。主な5つの要因を解説します。

要因1: 建物の劣化状況

劣化が進んでいるマンションほど、補修範囲が広がり費用が増えます。

  • タイル浮きが多い: +5〜15%
  • 外壁クラックが多い: +5〜10%
  • 屋上防水の全面更新が必要: +10〜20%
  • 鉄部のサビ進行: +3〜8%

要因2: 建物の形状・階数

シンプルな箱型より複雑な形状の方が、仮設工事費が増加します。

  • 凹凸の多い外壁: 仮設費+10〜20%
  • タワーマンション(15階以上): 仮設費+30〜50%
  • ペントハウス・複雑な屋上形状: +10〜15%

要因3: 立地条件

工事現場の立地によっても費用は変動します。

  • 都市部の狭隘地: 工事車両の駐車・搬入で割増
  • 隣地との距離が近い: 防音・防塵対策で割増
  • 海沿い・潮風の影響大: 高耐久仕様で割増

要因4: 仕様グレード

使用する材料のグレードによって、費用は大きく変わります。

仕様 1戸あたりの差
標準仕様(シリコン塗料・ウレタン防水) 基準値
高耐久仕様(フッ素塗料・塩ビシート防水) +20〜30万円
最高仕様(無機塗料・塩ビシート機械式固定工法) +40〜60万円

要因5: 発注方式

発注方式によって、コンサルタント費用や中間マージンの有無が変わります。

  • 責任施工方式: コンサル費用なし
  • 設計監理方式: コンサル費用が総額の5〜10%上乗せ
  • 管理会社元請方式: 管理会社の中間マージンが10〜20%上乗せ

発注方式の詳細はマンション大規模修繕の業者選び|3つの発注方式の比較で別途解説しています。


名古屋エリアの大規模修繕の特徴

名古屋市内のマンションの大規模修繕にも、地域特有の事情があります。

名古屋市内のマンション戸数規模の傾向

名古屋市内のマンションは、

  • 中心部(中区・東区・千種区): 中規模〜大規模(50〜200戸)が多い
  • 周辺部(北区・天白区・緑区など): 小規模〜中規模(30〜100戸)が多い
  • 名古屋駅周辺・栄エリア: タワーマンション(200戸以上)も増加

この戸数規模の傾向によって、適用される発注方式や費用感も異なります。

名古屋の気候と修繕仕様

名古屋エリアは以下の気候要因により、大規模修繕で考慮すべきポイントがあります。

  • 夏季の高温・強い紫外線 → 高耐久塗料の選定
  • 梅雨時の高湿度 → 防カビ・防藻仕様
  • 冬季の冷え込み → 凍結融解への対策
  • 港湾部の塩害(港区・南区の一部) → 防錆仕様の強化

これらの気候要因を考慮した仕様で見積もりを取ると、標準仕様より5〜10%程度コスト増になる事もあります。

名古屋市の支援制度

名古屋市では、マンションの長寿命化や省エネ改修を促す支援制度があります。

  • 名古屋市マンション管理適正化制度
  • 国土交通省「マンションストック長寿命化等モデル事業」(名古屋市内のマンションも対象)
  • 省エネ改修に関する補助制度

これらの活用により、総工事費の5〜10%程度を補助でカバーできる場合があります。申請には設計監理者の選任が必要なケースもあるため、発注方式の選定と合わせて検討すると良いでしょう。


適正価格を見極める3つのポイント

「相見積もりを取ったが、各社で金額が大きく違う。どれが適正価格?」という悩みもよく聞きます。適正価格を見極めるポイントを3つご紹介します。

ポイント1: 1戸あたり単価で比較する

総額だけでなく、1戸あたりの単価に換算して比較するのが基本です。

  • 100戸のマンションで総額1億2,000万円 → 1戸あたり120万円
  • 100戸のマンションで総額1億6,000万円 → 1戸あたり160万円

国交省調査の中央値(100戸規模で1戸あたり約120万円)と照らし合わせて、極端に高い・安い見積もりは要注意です。

ポイント2: 工事項目別の内訳を確認

総額が同じでも、内訳の構成比が大きく異なる事があります。

例: A社とB社の比較(100戸・総額1億2,000万円)

項目 A社 B社
仮設工事 1,800万円 1,200万円
外壁工事 4,800万円 5,800万円
防水工事 2,400万円 2,200万円
その他 3,000万円 2,800万円

A社は仮設工事に標準的な費用を計上、B社は仮設費が安いが外壁工事が高め…という違いがあります。各項目の中央値と比較して、極端に外れる項目がないか確認しましょう。

ポイント3: 仕様の妥当性を確認

「総額が安い見積もり」が、実は仕様を落としている事もあります。

確認すべき項目:
– 塗料のメーカー名・商品名・グレード
– 防水工法の種類と保証年数
– シーリング材の種類とグレード
– 補修範囲の根拠(劣化診断書との整合性)

仕様まで揃えた上で総額を比較するのが、本当の意味でフェアな比較です。


費用を抑える3つの戦略

大規模修繕の費用を適切に抑える戦略を、3つご紹介します。

戦略1: 早期発注によるコスト削減

長期修繕計画より2〜3年早く準備を始めると、

  • 複数業者から余裕を持って見積もりを取れる
  • 価格交渉の余地が生まれる
  • 業者の繁忙期を避けて発注できる(春・秋の繁忙期は割高)

総額の3〜5%程度のコスト削減が見込めます。

戦略2: 工事範囲の精査

「これも必要、あれも必要」と工事項目を膨らませると、すぐに予算オーバーになります。

  • 劣化診断に基づく必要工事の特定
  • 「やりたい工事」と「やるべき工事」の区別
  • 次回大規模修繕に先送り可能な項目の検討

総額の5〜10%程度のコスト削減が可能な事もあります。

戦略3: 発注方式の最適化

戸数・規模・管理組合の体制に応じて、最適な発注方式を選ぶ事で、コスト効率が変わります。

  • 小規模マンション(30戸以下): 責任施工方式が機動的
  • 中規模マンション(31〜150戸): 設計監理方式が透明性高
  • 大規模マンション(151戸以上): 設計監理方式または管理会社元請方式

発注方式の詳細はマンション大規模修繕の業者選び|3つの発注方式の比較で別途解説しています。


よくある質問(FAQ)

Q1. 修繕積立金の相場はいくら?

A. 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、専有面積1㎡あたり平均252〜335円/月が目安です。70㎡の住戸なら月17,640〜23,450円となります。

Q2. 1回目の大規模修繕は築何年で行うべき?

A. 従来は築12年が標準でしたが、2021年に国交省ガイドラインが改定され、現在は 築12〜18年 の幅で実施するマンションが増えています。建物の劣化状況に応じて柔軟に判断するのが現代の主流です。

Q3. 大規模修繕の費用は分割払いできる?

A. 通常、工事完了時に一括支払いが一般的ですが、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」を活用すれば長期借入も可能です。修繕積立金不足時の選択肢となります。

Q4. 名古屋エリアで信頼できる業者を見極めるコツは?

A. 名古屋市内での大規模修繕実績の有無、一級建築士・一級建築施工管理技士の在籍、過去の管理組合からの推薦状況などを確認しましょう。地元密着で長年営業している業者は、アフターフォローの観点でも安心です。

Q5. 大規模修繕の見積もりに含まれていない費用は?

A. 一般的に、設計監理費(設計監理方式の場合)、長期修繕計画の見直し費用、住民説明会の運営費、火災保険の見直し費用などは見積もりに含まれない事があります。事前に確認しておくと総予算が正確に把握できます。


まとめ|戸数・回数・仕様で費用は大きく変動、適正価格の見極めが鍵

マンション大規模修繕の費用相場を整理すると:

  • 1戸あたり100〜130万円が標準(国交省調査の中央値)
  • 戸数が増えるほど1戸あたり単価は下がる(スケールメリット)
  • 2回目以降は設備系工事の比重が増加
  • 工事項目の40%が外壁工事、20%が防水工事
  • 5つの要因(劣化状況・形状・立地・仕様・発注方式)で大きく変動

適正価格を見極めるには、1戸あたり単価での比較、工事項目別の内訳確認、仕様の妥当性の確認、という3つの視点が必要です。

理事会・修繕委員会で大規模修繕の検討を始める段階では、まず本記事の費用相場をもとに 概算予算の目処 を立て、長期修繕計画と修繕積立金の状況を確認するところからスタートするのが現実的です。

その上で、発注方式の選定、業者選び、住民合意形成といった次のステップに進んでいきます。


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